第2章 施策 1 もの
第2 章
施策
つくば市では今後,第1章で掲げた基本理念をもとに,市が行うさまざ まな事業にユニバーサルデザインの考え方を取り入れていきます。
第2章では,ユニバーサルデザインはまず「人」からはじまるという考 え方から,人にもっとも近い「もの」を最初にとりあげ,つづいて人の「生 活」,人をつなぐ「情報」,人が生きている「まち」の順に,ユニバーサル デザインを進めていくための考え方と取り組みの方向性についてまとめて います。
1
も
の
(1)つくば市の考え方と取り組み
毎日の生活のなかで,いろいろな人が日用品や家電製品・住宅設備・公 共機器・福祉機器など多くの「もの」を使って暮らしています。だれもが 同じように「もの」を使えるべきであることを理解し,多くの人が安全に 気持よく「もの」を使うことができる環境づくりをめざします。
「もの」は,人のさまざまな不自由さをカバーする,人にもっとも近い 道具であり,だれもが自立した行動・生活を行うために必要です。そのた め,「もの」の不便さをできるかぎり取り除き,いろいろな人への使いやす さに配慮することが大切です。また,「もの」を使ってだれもが暮らしやす い環境をつくるためには,配慮された良い「もの」を普及させることも大 切です。
第2章 施策 1 もの
(2)各項目
だれもが安心して気持よく「もの」を使えるようにするためには,使う 人の身体の機能や能力を考えた使いやすさ,知識やことば,見えにくさ・ 聞こえにくさなどの感覚能力の違いを考えた使い方や表示(情報),体格や 姿勢,移動能力などに合わせた動きやすさなどに配慮し,いろいろな人が 使えるように使い方の幅を広げることが大切です。配慮するポイントをま とめると以下のようになります。
• だれもが同じように使える:子どもや大人,高齢者も障害のある人も外
国人も,いろいろな人が差別なく安心して使える。
• いろいろな方法で使える:右利きの人でも左利きの人でも使えるなど,
できるだけいろいろな方法で使える。
• 使い方がわかりやすい:使う人の知識や経験,ことばの違い,年齢など
に関わりなく,「もの」の形や表示を見て使い方がすぐわかる。
• わかりやすい情報:見えにくい人は音声で,聞こえにくい人は文字で,
日本語表記以外でも説明するなど,使うためのわかりやすい表示や案内 などの情報に配慮する。
• 誤った使い方をしても危険につながらない:使う時に間違った使い方に
ならないように,もし使い方を誤っても大きな危険につながらない,元 どおりに回復できる。
• 身体に無理がなく使える:高齢者や子どもなど力のない人にも無理なく
使える,使う人にとって自然な姿勢で使える,など身体に無理がなく楽 に気持よく使える。
• 使いやすい大きさや広さがある:車いすや身体の不自由な人,子どもや
大人など,いろいろな使う人にとって使いやすい大きさや広さ,場所な どを確保する。
• 人や環境にやさしく安全:身体に有害なものやアレルギーの原因となる
もの,環境に有害なものを極力使わないように安全に配慮する。
• 使い心地がよく美しい:気持よく使うことができ,美しく,さらに品質
第2章 施策 2 生活
2
生活
(1)つくば市の考え方と取り組み
一人一人が質の高い豊かな人生を送るためには,だれにとっても公平で, 安全・安心で暮らしやすく,健康で快適・文化的な暮らし・住まい・生活 が求められます。つくば市では,防災,健康,住宅,育児,教育,労働, 文化活動など,さまざまな側面から市民生活を支援し,ユニバーサルデザ インの考え方に基づいた施策を推進していきます。
そのためには,だれもが社会参加できる環境づくり,介護や自立支援と いったライフサイクルをとおして住みつづけられるための配慮,こうした 生活を支えるだれもが助けあい,参加できる地域コミュニティづくりなど が重要となります。
その他にも国籍や言語の違い障害の有無に関わらず,新しくつくば市の 住民となる方が,すぐに生活に慣れることができるような工夫についても 積極的に取り組んでいきます。
(2)各項目
①防災・安全 ―― 「もしも… 」の不安を地域で解消する
自然災害,交通事故,環境問題,犯罪など,人間の生命と暮らしの安全・ 安心をおびやかす問題がつくば市でも起きています。災害や危険からの被 害を最小限に抑えるために,事前に予防するしくみと環境を整えるととも に,地域の自治会・病院・学校・ケア施設,さらには民間施設・公共施設, NPOやボランティア団体などが連携するしくみをつくり,地域ぐるみの防犯 体制,救援・避難体制の整備をめざします。
実際に大地震等の巨大被害が起こった場合には,支援や物資などの救援 が届くまでの期間をいかに地域の身近な人人で協力しあい,生命の安全を 確保するかが重要になります。そのためには,日頃の市民一人一人の防災 意識と知識,地域住民の助けあいの意識を高める広報活動も大切です。
第2章 施策 2 生活
に不利な状況となることがあります。実際に問題が起きたときに不利な立 場となる人を出さないように,不幸にして災害を受けた場合には,すべて の人人が等しく市などの支援を受けられるような対応計画を検討していき ます。
②健康・医療 ―― 生涯を通じて健全な生活を送る
だれもが安全・安心な暮らしを送るためには,年齢や身体状況などに関 係なく,子どもから高齢者までライフサイクルを通じて健康維持・疾病予 防できる施設・受け入れ体制の整備が必要です。つくば市では,公立・民 間病院をはじめとした各医療機関,NPO・市民団体などとも連携強化を図り ながら,市民一人一人にきめ細やかに対応できる健康維持・医療システム づくりをめざします。
また,少子化対策の一環として乳幼児や小児医療の充実,通院がむずか しい高齢者や障害のある人に対応した地域医療体制の確立や在宅医療サー ビスの向上,ことばのバリアのある外国人医療なども検討していきます。
③住まい ―― 住みつづけられる家,生活を支えるシステム
安心・快適な生活には,住みつづけられる住まいがあることが基本です。 だれもが安全で暮らしやすく,快適で文化的な生活を送るための住まいの 供給とライフサイクルをとおして住みつづけることのできる生活支援サー ビスのシステムづくりを推進します。
そのためには,高齢者・障害者を含め,さまざまな市民の必要性に合わ せたさまざまな住宅の計画的供給,耐震などの住宅の安全確保,自立して 住みつづけるための住宅のユニバーサルデザイン・バリアフリー化,居住 者のさまざまなニーズに合わせた住宅改造システムの整備,住みなれた地 域に生活しつづけるための居住サービスなどが重要です。
第2章 施策 2 生活
り地域で生活できるコミュニティの形成をめざします。
④育児・保育 ―― 安心して産み,育てる
国籍や障害の有無を越えて,幼いころからお互いにふれあうことは,一 人一人を大切にし,支えあう心を育てます。このような機会を増やすため に,育児・保育施設のユニバーサルデザイン・バリアフリー化を進めると ともに,安心して育児・保育ができる環境づくり,さまざまな機能をもつ 子育て支援施設・サービス事業の整備促進をめざします。
また,法律や制度は次第に整備されているものの,現実的には「男性は 仕事,女性は家事・育児」といった社会通念がいまだに根強く残っていま す。どのような家族形態であっても安心して子どもを生み,育てられる環 境を整備するために,産休制度や育児休業制度の普及・定着を呼びかけ, 性別に関わらず誰もが取り組みやすい育児・保育を推進していきます。同 時に核家族化を背景に子育てが孤独なものにならないように,育児交流活 動の支援や事業者などに対する雇用指導なども検討していきます。
⑤教育 ―― いっしょに学ぶ,ずっと学ぶ
子どもの個性や障害の程度,経済的状況,ことばの違いに応じて教育の 場を選択できることが大切です。そこで,つくば市では,教育内容や校舎 のつくりを見直し,経済的支援などを行っていきます。学校のI T活用では, 障害や使用する言語にかかわらず,I Tが使えるよう利用しやすさに配慮し, I Tを活用した次世代教育をめざします。
また,つくば市には大学のほか多くの研究所があります。こうした機関 の豊富な人材や資源を活用し,市民だれもが参加し教養を高めることので きるさまざまな公開講座・市民講座の開催も検討していきます。
⑥労働 ――働く意思を尊重し,いかしていく
第2章 施策 2 生活
いきいきと働ける職場づくり,しくみづくりが求められています。I T技術 の進歩などによって,さまざまな働き方が可能になってはいますが,在宅 勤務,起業,フレックスタイム,ワークシェアリング,福祉的就労など, 時間や場所に柔軟性のある多様な労働形態の確立が求められます。
また,職場の設備や環境の整備だけでなく,こうした人人を受け入れる 法制度の整備や人の心のバリアを取り除くことも大切です。そのためには 事業主などを対象としたユニバーサルデザインの意識を高める活動も必要 です。
つくば市は,さまざまな人のニーズに合致する労働環境の整備,適職探 しの場づくりをめざします。
⑦介護・自立支援 ―― 社会全体で支えるしくみづくり
つくば市は,平成15年に全市民における65歳以上の高齢者の割合が14% を超え,いわゆる「高齢社会」となっています。今後も確実にこの割合は 高くなり,高齢者をめぐる「介護」環境の整備は,急務といえます。
一方で,障害のある人が社会のあらゆる分野に積極的に参加し,地域の中 で自立して生活するしくみや環境を整えていくことも求められています。
たとえ介護や支援が必要な状態であっても,できるだけ自分らしく生きた い,自分の能力をいかして地域社会に積極的に参加したいというのは共通の 願いです。つくば市は,尊厳・主体性を尊重した介護,自立支援,地域福祉 の整備などの点について配慮し,どこに住んでいても市民が求める適切な介 護・生活支援サービスを提供できる介護システム,自立した生活や社会参加 をサポートするしくみづくりをめざします。
第2章 施策 3 情報
⑧余暇・レクリエーション・文化的活動 ―― 心の豊かさや活力を生む
余暇やレクリエーション,文化的活動などは,人が生きていくうえで欠 かせないものであり,それによって心の豊かさや活力に満ちた暮らしが可 能になるとともに,身体と精神の健康維持・増進にも大いに役立つ大切な ものです。市民全体のこうした活動を推進することで,質の高い文化が育 つ環境が整い,個性豊かな地域文化の保存・継承が促進され,新たな文化 の創造にもつながります。
第2章 施策 3 情報
3
情報
(1)つくば市の考え方と取り組み
より良いユニバーサルデザインを実現していくためには,双方が互いに 相手を配慮し,双方向の「話し合い」の中から実現していくことが大切で す。特に「情報」は,互いのやりとりやコミュニケーションの中で交わさ れる「内容」そのものですから,どちらかが一方的に提供する,あるいは 一方的に受け取る状況だけでは,決して良いものにはなりません。
この基本方針策定にあたり,市民のみなさんに行ったアンケート(第4 章「『快適な生活づくりのためのアンケート』結果」参照)の結果では,約 半数の市民が市のホームページを「見たことがない」という状況であり, 市の広報紙についても「その存在を知らない」,または「知っていてもどの ようにすれば手に入れられるのかわからない」という指摘がありました。
市は,「情報」のユニバーサルデザインを実現するために,その存在や意 義をきちんとアピールするように努めます。一方,市民のみなさんには, 積極的に市に問い合わせていただくなど,情報を得るための働きかけが必 要となります。積極的な問い合わせが,結果として市の取り組みをより良 く変えていきます。
現代は,急速に情報化が進んでいるといわれますが,その一方で,パソ コンやインターネットなど新しい情報機器を使いこなせない高齢者や子ど もたち,障害のある人がこうした情報社会から取り残されていく危険性も 存在しています。そして,扱われる「情報」も時代や状況の変化に応じて その内容が激しく変化していきます。こうしたことから,「情報」のユニバ ーサルデザインを実現した望ましい社会をつくっていくためには,今回の 調査のような提供する側と受け取る側のやり取り,コミュニケーションを 常に続けていかなければなりません。
(2)各項目
①市と市民をつなぐコミュニケーション
(ア)事実と姿勢を伝えるサイン
第2章 施策 3 情報
れています。サインのためのわかりやすいシンボルマークなどもいろいろ と工夫されており,慣れている人には,非常にわかりやすい環境がつくら れています。
しかし忘れてはいけないのは,こうしたサインに慣れていない人たちに とっては,必ずしもわかりやすい環境にはなっていないということです。 そして,多くのサインが掲示されている環境は,無言で「サインがわから ない人が悪い」といった雰囲気をつくってしまいます。もちろん,わかり やすいサインを整備していくことは大切ですが,その一方で,こうした人 たちのためにも気軽に問い合わせることができるような垣根の低いコミュ ニケーションの窓口をつくっていくことも大切です。
たとえば,羽田空港の出発や到着ロビーの案内所には,「手話勉強中」と いうサインが出ています(写真)。
このサインは,決して空港内の案内をしているわけではありませんが, 空港職員が手話に取り組んでいるという姿勢がわかります。そして,たと え手話が今はまだ未熟であったとしても,耳の不自由な人の問い合わせに 積極的に応えていきますという姿勢も示しています。
つくば市は,このようなサインの工夫も大切であると考えています。 (イ)アクセシビリティに配慮したホームページ
市民のだれもが自分の読みやすい形態に変更できるホームページ構成に し,特殊なソフトウェアを使わないと読めないページにならないように配 慮する必要があります。また,視覚障害・聴覚障害などの感覚障害者にと
第2章 施策 3 情報
って情報が欠落することのないよう,肢体不自由者にとって操作が困難に ならないような配慮も必要です。
アンケートでは,なかなか求めている情報に到達できないという不満や 既に用意されている内容が知られていないということがわかりました。ア クセシビリティや使いやすさ,作成基準などに留意することは基本的な姿 勢として大事ですが,使い方の講習会や制作側の姿勢アピールなど,ホー ムページを通した市民と市とのコミュニケーションがなにより重要だと考 えられます。
(ウ)IT化もサービスも重視した窓口業務
現在,サービス提供の接点となるさまざまな窓口業務等が自動化され, 市民は その機 械と 専 用のイ ンター フェ イ ス
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を介し てサ ービス を受け はじ めています。しかし,このインターフェイスによっては,同等のサービス を受けづらい人もいます。特に子ども,高齢者,障害のある人,そして外 国人は,感覚器や言語の問題などによって操作方法が理解しづらく,必要 な操作を実行できないことが多くあります。特に自動化されたI T機器に関 しては,その操作に不慣れな人はすべて同様の状況に陥ることでしょう。 そのために,機器の設置や導入には注意が必要です。
たとえば,人が担当していた窓口業務では相手の状況を察したり,要求 事項を聞き出すといったことができても,機械の場合,人と同じような対 応はできません。人が行っていたことを単に機械に置き換えるだけではな く,I T機器の導入によってさらに生活の質が向上することをめざす必要が あります。
第2章 施策 3 情報
• 車いす利用など移動に制限のある人:通行や接近を阻害する物の排除,
段差をつくらない,十分緩やかなスロープの設置
• 耳の不自由な人:視覚的な情報提示や環境雑音等の軽減(明瞭な音声・
音響情報),手話や筆談による情報保障
• 目の不自由な人:点字ブロックや音声・音響情報による移動補助,十分
に大きく明瞭な文字表示や点字による情報保障,適切な照明設備の設置 • 子ども,体の大きさや認知上の困難さをもつ人:設置位置や高さへの配
慮,短くわかりやすい説明,写真やイラストによる説明のサポート • 手 指 等 の 運 動 に 困 難 を も つ 人 : 操 作 ボ タ ン の 大 き さ や 形 状 へ の 配 慮,
ON/ OFF等の時間タイミングの考慮
• 外国人:日本語の文字や音声による説明を複数の言語に翻訳,直感的で
わかりやすいシンボルマークで提示
• 高齢者:上記の配慮と数多くの項目が重複
ところで,上記のようにI T化することによって生じる格差をなくす取り 組みも重要ですが,市民と市職員との円滑なコミュニケーションも重要と いえます。アンケートの結果からは,つくば市民の公共施設に対する要望 はさまざまであるということがわかります。市役所やその関連施設(公民 館,図書館,児童館,体育館等)でサービス提供の時間帯や予約手法(シ ステム)に対する苦情・要望が多く,従来のサービスをI T化して提供する だけではなく,働く市民が円滑にサービスを利用できる窓口の開設時間, 市民が気持ち良くサービスを利用できる窓口対応など,サービスの質をさ らに向上させ,利便性も高めていく必要があります。
今後つくば市では,窓口業務のI T化を進めるにあたり,その実施には, 機械(システム)上の問題だけではなく,人と人とのコミュニケーション を重視することをめざします。そして,情報やサービスを適切に受けられ る人と受けられない人が生じないように十分な配慮を心がけます。
第2章 施策 3 情報
②情報社会に求められる情報保障の考え方
(ア)だれもがさまざまな情報を共有できる
文字による案内,スピーカーから流れる音声,会議や講演会での話し声 など,普段私たちの回りには多くの情報があふれています。さまざまなニ ーズをもったすべての人が快適な社会生活を送るためには,こうした情報 をすべての市民に等しく伝えあう「情報保障」の取り組みが不可欠です。
たとえば,音声案内が流れている場所では,耳の聞こえない人・聞こえ にくい人が大切な情報を受け取れない可能性があります。また,文字によ る案内のみでは,目の見えない人・見えにくい人には届かない情報があり ます。日本語がわからない外国人にとって,わかりにくい情報もあります。 手話や外国語で発信された情報が受け取れない市民もたくさんいるはずで す。このように,音声や文字,外国語,その他で発信されたさまざまな情 報を,その場にいるすべての人が共有し,だれもが対等に情報のやりとり に参加できる環境を整備すること,これが「情報保障」の基本的な考え方 です。
「情報保障」の中には,たとえば,まちの中のちょっとした案内など, 文字や点字・音声・手話・多言語等で表現することで実現可能なものもあ ります。また,聞こえにくい人の聞き取りを援助する集団補聴設備や見え にくい人のための拡大読書器やルーペ等を設置することで保障可能な部分 もあります。さらに,手話通訳者や要約筆記者,点訳者,音訳者,外国語 通訳者等,専門的な情報保障を担う人材(以下「情報保障者」)による支援 が必要な場面もあります。
つくば市で学ぶ・働く・生活するだれもが,いつでもどこでも必要な情 報保障が受けられる体制を整備していく必要があります。
(イ)つくば市ならではの新しい技術の活用
市内の各行政機関や病院・銀行などの公共性の高い機関では,職員が直 接手話や英語などを使って対応する,または各機関に通訳者が配置されて いることが望まれますが,実際には非常にむずかしいのが現状です。
第2章 施策 3 情報
ス」が可能になります。こうした取り組みは,すでにいくつかの自治体で 試験的に行われています。一方,視力の弱い人は,図書館で本を読んだり, 市役所などで各種書類を閲覧するのが困難ですが,この解決策のひとつと して拡大読書器があります(第4章「使いやすさに配慮したものづくりの 具体例」参照)。
つくば市では,市内の研究機関・大学等でこうした新しい技術をいかし たシステム・ものづくりも行われており,市民や現場の要望,実際のシス テム導入にかかる費用などの具体的な調査を行いながら,新しい技術を活 用した情報保障を検討していきます。
窓 口 に 訪 れ た 聴 覚 障 害 の あ る
人は,モニターに映し出された
手話通訳の映像を見ながら,窓
口の職員と会話ができる。外国
語に関しても方法は同様(図)
窓 口 で の 遠 隔 手 話 通 訳 に 関 す
る実験を行っている様子(写真)
(ウ)災害時に役立つさまざまな情報チャンネル
第2章 施策 3 情報
情報を伝える際には,情報を受け取る人の特性に合わせたさまざまな情 報チャンネルを利用することが重要です。特に,「情報弱者」といわれる人 たちへ情報を伝える場合には,情報チャンネルの有効活用が必要になりま す。災害時には多くの情報が遮断されてしまう場合があり,日頃からさま ざまな情報のチャンネルを確保しておくことが大事になります。
また,こうした大きな災害や緊急の事態でいちばん頼りになるのが,地 域コミュニティからの支援です。そのためには,日頃から介護や支援を必 要とする人人を取り巻く,暖かい地域環境の整備が必要になります。
自治会活動などをとおして,介護や支援を必要とする人人に配慮しただ れ一人逃げ遅れることのないような避難体制の整備が必要です。
第3章 普及・推進に向けて 5 まち
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まち
(1)つくば市の考え方と取り組み
これまでユニバーサルデザインのまちづくりは,ハートビル法
1
と交通バ リアフリー法
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(第4章「生活しやすいまちづくり」参照)の二つの法律と 「つくば市福祉環境整備指針」を基本に進められてきました。二つの法律 は,その名のとおり建築物や交通機関において,高齢者や障害のある人が 円滑に利用できるための指針が示されていますが,ここで示されている誘 導的な数値はあくまで整備すべき基準です。ユニバーサルデザインは,こ れらの指針をベースに,さらに「高齢者や障害のある人のみならず利用者 みんなにとって快適」であることをめざす考え方です。
だれもが快適に生活できるまちをつくるためには,建物や道路・乗り物 など(ハード)を利用しやすく整備することが必要です。さらに建物をつ なぐ公共交通や道路,建物内の移動空間と活動空間などが,連続した動線 として一体的に整備されている必要があります。
第3章 普及・推進に向けて 5 まち
1 ハートビル法:高齢 者,身体障害者等が円滑に 利用できる特定建築物の建 築の促進 に関する法律
2 交通バリ アフリー 法 :高齢者, 身体障害 者等の 公共交通機 関を利用 した移 動の円滑 化の促進に関する法律
(2)各項目
①だれでも,どこにいても生活しやすいまち
(ア)だれもが公平な利用ができる
さまざまな人たちが日々生活する「まち」では,まず“ わかりやすいこ と” が大切です。複雑な道路や建築空間をいかにわかりやすく丁寧に案内 できるかを考えるまえに,案内やサインに頼らなくても目的の場所で目的 の活動ができる「単純で明快な」道路や建物が望まれるのです。建物は, ますます巨大になり複雑な機能をもっていきます。これらの機能をうまく 区分し,目的の場所へ的確に負担なく行けるように配慮することが,まち のユニバーサルデザインの大切な要素です。
また,だれもが“ 公平に,同じように” 利用できることも大切な目標と なります。エレベーターを敷設すれば車いす利用者も上下の移動ができる ようになりますが,そのエレベーターを利用するためにわざわざ遠回りを するのでは,すべての人に優しい建物とはいえません。行くことが“ でき る” ,することが“ できる” だけでは不十分です。
すべての人が同じ活動を同じようにできるよう,道路や建物を計画し, ときには設備を配置して整備していくことが求められています。人それぞ れの特徴や状況は千差万別ですが,どのような場合でも同じように活動で きるよう,選択肢を用意しておくことも大切です。
(イ)どこに住んでも生活しやすい
つくば市の市域は非常に広く,都市機能が整備された研究学園地区と豊 かな自然に恵まれた田園地区とに大きく分かれることが特色です。
第3章 普及・推進に向けて 5 まち
ても便利な交通手段です。しかし,自家用車を利用しない人や利用できな い人もたくさんいます。また,加齢などのなんらかの理由で,現在自家用 車を利用している人が利用できなくなることもあります。
自家用車に頼らなくても生活しやすいまちにするために,民間バスやコ ミュニティバスの運行路線,運行時刻や運用方法について,市民・事業者・ 市の三者が集まって話しあい,地域間格差のない使いやすい公共交通ネッ トワーク(さまざまなバスシステムや運行ダイヤなど)を実現することも 必要です。また,安全・安心に活動できるため,防犯・防災のためにも, 街灯の整備を進める必要があります。
②安全・便利に移動できる交通
(ア)人も車も使いやすい道路
道路は,自動車,バイク,自転車,歩行者などがともに利用するもので す。そのため,それぞれの移動手段において安全で快適に移動できるよう な整備をしなければなりません。すべての道路をユニバーサルデザインに 配慮したものにするためには,新規に道路を整備する場合だけでなく,す でにある道路を改良する場合についても,ユニバーサルデザインへの取り 組みを推進する必要があります。
しかし,いずれの場合においても,利用者のニーズや整備効果または社 会情勢等を踏まえた優先順位付けを行い,重点的に事業を実施していくこ とが不可欠です。地域の特性を加味しながら,十分に広い車道整備をめざ すほか,滑りにくい素材や緩やかな勾配などを考慮しただれもが利用しや すい歩道整備をめざします。また,夜間には十分な明るさを確保し,防犯 にも適した道路の整備をめざします。
(イ)便利さをつなげる公共交通
第3章 普及・推進に向けて 5 まち
たとえば,目の不自由な人がバスを利用する場合,路線ごとに同じ形や デザインの車両で運行されていれば,戸惑うことなく,より利用しやすく なります。
さらに,駅舎,バスターミナル,バス停,タクシー乗り場などについて もだれもが安全で快適に利用できるようユニバーサルデザイン化を促進す るとともに,それぞれの交通機関への乗り継ぎや周辺施設への移動がしや すいようにハード・ソフト両面を考慮しながら便利で利用しやすい公共交 通機関・交通施設をめざします。
(ウ)交通安全は規則と守る気持ちから
商業施設,公共施設,駅,バスターミナルが集中する市中心部において は,駐車場・駐輪場などが不足しているために,迷惑駐車・駐輪が絶えず, 事故につながる危険な状況が発生しています。駐車場・駐輪場などの整備・ 推進や通行規制などについて,市民,事業者,市が話しあい,ともに安全 なまちをつくることをめざします。
また,十分な駐車場・駐輪場が整備され,走りやすさ・歩きやすさに配 慮して整備された車道や歩道であっても,だれかが迷惑駐車・駐輪をして しまえば使いにくいものになってしまいます。このように考えると何より 大事なのは,このまちでともに生活する自分以外の人を尊重し,心づかい と助けあいによってだれもが快適に生活することができるまちにしようと する「心のユニバーサルデザイン化」を推進することです。
(エ)移動を支援するわかりやすい案内標識
運転者や歩行者が現在位置を簡単に把握でき,目的地まで迷わず行くこ とができる,わかりやすい案内標識等の整備をめざします。
第3章 普及・推進に向けて 5 まち
③安心・快適に活動できる空間
(ア)生活に深くかかわる建物
人は,毎日さまざまな建物を利用しながら生活しています。寝食の場で ある住居にはじまり,学校などの教育施設,日々の買い物をするデパート などの商業施設,オフィス,高齢者施設や障害者センターなどの福祉施設, 図書館や美術館といった公共施設など,建物を利用しないで生活している 人はいません。このように生活に深く関わる建物をだれもが快適に,安全 に安心して,簡単に,そして使いやすく,利用できるようユニバーサルデ ザイン化することは,まちづくりの中心に位置付けられるべきものです。
建物については,「ハートビル法」や「つくば市福祉環境整備指針」が, その誘導的な数値基準を示しています。しかし,その基準を遵守するだけ ではなく,どのようにすればすべての人がより安全に快適に負担なく利用 できるかをしっかりと考え,実現する必要があります。
今後つくられる新規建物のユニバーサルデザイン化を図るとともに,す でにある建物についても改善を進め,だれもが安全・快適に利用できる建 物の整備をめざします。
(イ)まちと人にうるおいをもたらす緑の空間
自然豊かな緑の空間は,まちにうるおいをもたらし,そこに生活する市 民の憩いの空間として,リフレッシュや健康づくりのための貴重な場所と いえます。それだけに,だれもが利用できる環境が求められます。
一般に公園・緑地・河川等は,自然とふれあえる空間としてすべての人 に開かれています。また,つくば市の市民一人あたりの都市公園面積は全 国的にみても高い水準にあります。しかし,地形等の条件によってはだれ もが利用することがむずかしい場合もあります。つくば市では,できるだ けバリアフリー化を進めるとともに,施設の設備・環境などの情報公開, 多くの人の要望に対応できる選択肢の提供などをソフト・ハードの両面か ら配慮し,だれもが自然を楽しめる場づくりをめざします。
(ウ)プロセス重視の開かれた建物づくり
第3章 普及・推進に向けて 5 まち